第31回:アインシュタインの思考実験
さて、アインシュタインの『動いている物体の電気力学』・・・
一連の『相対性理論』の最初の論文ですが、
そもそもは、マックスウェルの電気力学の理論が、
「運動している物体」でも成立すると事を証明し、
当時議論されていた”エーテル”の存在(必要性)を否定するためのもの?
ここで、彼は、「相対性原理」と「光速度不変原理(光速は光源の運動に無関係)」
という主張により成立させました。
これは、「相対性原理」に於いて、
どの慣性系でも、「物理現象は同じである」という事を、
「光速度不変」と仮定した場合にどうなるか?を論じたもので、
結果的に、空間も時間も歪んでしまうという結論になった訳です。
元々、この論文は、
ある1つの同一の「現象」(電気力学)が、
どの様な「系」から観測しても同一である、
即ち、マックスウェルの電気力学の理論が成立する事を証明しようとした訳ですが・・・
系が異なれば観測される結果は異なって当然ではないのか?
例えば、遠い恒星からの光が「赤方偏移」し、
その偏移量は、恒星の遠ざかる速度に比例します。
つまり、相対速度によって周波数(波長)が変わる訳で、
これは、素直に?光速度が変わった場合と全く同じ現象です。
ですから、
この理論に基づいた理論や実験や観測結果が、
この理論の通りであったからと言って、
「光速度不変」が証明された訳ではありません。
『光速度は相対的』という前提で説明すれば、
空間も時間も歪ませることなく、
同じ結果を導くことが可能だ・・・というのが、
私の信念であり、私の『真理』です。(^○^;)
さて・・・
この論文の『T.運動学の部』の説明に於いて、
極めて単純で解りやすい仮定により解説していますが、
その、静止系の時計合わせに於いて、
根本的な間違いと言うか、誤魔化しがあります。
それは、
各座標にある時計を合わせるために、
光が往復する時間の、行きと帰りが等しいと主張するために、
「光速度不変」を原理として仮定しています。
しかし、同一の系の中での話であれば、
光速度が相対的であっても同じ結果であり、
「光速度不変」を原理として仮定する必要がありません。
むしろ、この説明こそ、
アインシュタインが本領を発揮している場面で、
時計を合わせるという手法に注意を向けるためのものです。
同じK系上で静止している時計は、
K系の座標のどこにあっても、原点の時計と同じ値を示すので、
こんな話をわざわざ持ち出す必要は無く、
論理的には不要な前置きであり意味がありません。
もし意味を持たせるのであれば、
それらの時計が原点の観測者からどう見えるか?が問題になる場合だけです。
異なる系から観測しても光源の運動に関係せずに光の速度は同じ、
という「光速度不変」が必要になるのは、
異なる系の時計を合わせるのに光を使う場合、
行きと帰りの時間が等しいとしたいためです。
また、離れた位置における事象を認識する「一致性」と、
「同じ場所で同時に発生」した事象を、
それぞれ離れた位置で『認識する遅れ』を、
巧妙に混同させています。(^○^;)
では、ここで、アインシュタインが論文で使用した思考実験、
即ち、運動する物体の図について考察してみます。
観測者が静止している系を「K系」として、
横軸はK系のX軸で、
縦軸はK系の時間軸なので、
これは『時空』の2次元グラフになります。
X軸上に剛体の棒(左端が”A”、右端が”B”)があり、
右(プラス)方向へ速度vで移動します。
右上がりのA0〜A1〜A2と、
B0〜B1〜B2が、
棒のA点とB点の時空上の軌跡になります。
後端Aが、K系の原点を通過する瞬間に、
AからBへ向かって光を発射すると、
Bは遠ざかりながら光が追いつくので、
静止時のAB間より長い時間をかけてBに到達します。
光はBですぐに反射されてAへ戻りますが、
今度はAか近づいてくる方向なので、
短い時間でAに戻ります。
すると、時空グラフ上の光の軌跡がA0〜B1〜A2となり、
A0〜A2の中間点Mと、B1を結んだMB1が、
K’系(移動する棒の系)の同一の時刻を結んだ世界線で、
右上がりの斜め線になります。
なので、
K系から見ると、
AB上の位置によってK’系の時刻が異なって見え、
原点から遠いほど遅れが大きくなります。
さて、これを参考に、
光速度相対で「時空グラフ」を書いてみます。
上図と同様に、
横軸はK系のX軸、縦軸はK系の時間軸とした『時空』の2次元グラフとします。
X軸の目盛りは30万km毎に、
目の前で発生した事象の時刻を記録する時計が置かれているとします。
これらの時計を、原点にいる観測者から見た時、
時計から時刻情報を通知するのに、
1目盛目の時計は1秒、2目盛目は2秒かかり、
都合、観測者からは、それぞれ、1秒遅れ、2秒遅れで見える事になります。
剛体の棒(AB)は、長さ30万kmで、
後端Aが原点位置にあるとき、
先端Bが1個目の目盛りの位置にあり、
速度v=0.5c(光速度の半分)で右(プラス)方向へ移動します。
また、
剛体の後端Aと先端Bにも時計が置かれてあり、
後端Bが原点(t0)を通過する瞬間に、K系原点の時計と一致しているものとします。
これらAとBの時計は、K’系では同じ時刻ですが、
K系の観測者から見ると、
Bの時計はAに対して「1秒遅れ」に見えます。
さて、K系のそれぞれの目盛りの位置にある時計の前を、
棒ABのAまたはBが通過した瞬間に、
その時計の時刻が光速で原点の観測者に通知されます。
これは即ち、アインシュタインが主張する、
光源の運動に関わらず光速度一定=cで伝わる状況を示します。
その様子を描いたのが『青色』の図です。
一方、K’系(棒)上のAとBの時計からの信号は、
棒の進行方向とは逆方向へ進むので、
速度(c−v)=0.5cで原点へ向かいます。
その様子が『赤色』の図です。
黒い太線の矢印が剛体の棒で、
v=0.5cで右へ移動するので、
右上がりの黒い点線が、AとBの軌跡で、
黒矢印のA(2)−B(2)が”2秒後”の位置です。
t0の時、Aは原点にあり、
Bは、1つ目の目盛りの位置にあるので、
B点が通過した時計の情報が原点(観測者)へ向かう軌跡は、
左上がりの青い点線となります。
一方、棒のBにある時計の情報は、
0.5cで原点へ向かうので、
左上がりの赤い点線となります。
t0時の青の信号”B(0)”が原点(観測者)に届くのは1秒後なので、
右上がりの青い太線の矢印が、
「時空グラフ」上の、ABの位置になります。
つまり、この矢印は、
K’系の同一時刻を結んだ線であり、
K’系の世界線になります。
この時(Bの信号が届いた時)に、
同時に届くAの信号は、
左上がりの青い点線が、
右上がりの黒い点線と交わる(水色の点線矢印の)位置で発したものなので、
A(2/3)…約0.667秒時となります。
つまり、この時点で見えているABは、
t1.0の横線上の青の点線矢印です。
即ち、通知された時刻は、
Aが0.333秒遅れ、Bが1秒遅れで、
AとBの時間差は0.667秒となります。
また、
その時見えるAとBの位置の差=棒の長さは、
実際の長さ(30万km)に対して、
3分の2=20万kmと短くなります。
一方、
t0時のB点の情報”B(0)”が原点(観測者)に届くのは、
0.5cで進むので2秒後となり、
右上がりの赤い太線の矢印が、
「時空グラフ」上の、ABの位置になります。
つまり、この矢印は、
K’系の同一時刻を結んだ線であり、
これが光速度相対の世界線です。
この時(Bの信号が届いた時)に、
同時に届くAの信号は、
左上がりの赤い点線が、
右上がりの黒い点線と交わる(ピンクの点線矢印の)位置で発したものなので、
A(1)…1秒時(Bは0秒)となります。
つまり、この時点で見えているABは、
t2.0の横線上の赤の点線矢印です。
即ち、通知された時刻は、
Aが1秒遅れ、Bが2秒遅れで、
AとBの時間差は1秒となります。
そして、
その時見えるAとBの位置の差=棒の長さは、
実際の長さの2分の1=15万kmとなります。
また、
光速度が変化すると、一定時間に進む距離が変わるので、
波長が変化して「ドップラー効果」が発生します。
一方、青い線、つまり光速度不変の場合は、
ドップラー効果は発生しません。
さて、本来であれば、
この図を、vを変数にした方程式で現わすべきなのでしょうけど、
私の場合は、より解りやすいように図で示しますぅ〜!(^○^;)
先ずは、v=0(静止)ですが、
この場合、K系=K’系になり、
X軸も時間軸も一致するので、
位置も長さも同じになります。↓
一方、v=c(光速度)の場合、
ABからの光は原点に永久に届きません〜!(^○^;)
つまり、
剛体の棒(AB)のA点が原点を通過すると、
長さがゼロになり、
時間が止まり、
消えて、
その後ろ姿は見えません〜!(^_^;)
という事で、
光速度相対の場合のABの距離は、
v=0で実際と同じになり、
vに反比例して短くなり、
v=cで長さ=0(時間が止まる)になって見えなくなります。
一方、K系の各座標から通知される時刻情報は、
下図の青線で現わされます。↓
つまり、光速度不変の場合のABの距離は、
v=0で実際と同じで、
vに反比例して短くなりますが、
v=cで長さ=2分の1どまり、
ABの時間差も2分の1(0.5秒)どまりです。
素直に考えて?
どちらが正しいと感じるでしょうか?
しかし、この思考実験は、
これでは、まだまだ不足です。
【続く】