第45回:「重力と時間」


さて、それでは、光には無いとされる「質量」って何でしょう?

そもそも、「物質が存在する」というのは、
その物質が光を反射したり放射して「目に見える」とか、
熱を放射して「赤外線で見える」(熱さ、冷たさを感じる)とか、
『手で掴める』とかです。

手で掴むというのは、手の細胞、分子、原子が、
その物質の原子と直接ぶつかる訳ではなく、
手の細胞(原子)の「反発力」と、物質の「反発力」によって、
触れて、掴めて、持ち上げられます。

手の細胞の反発力は、その物質との間だけでなく、
手の細胞同士でも押し合い、圧迫され、変形して、
その反発力に見合った力で、掴もうとする物質と相互作用(反発)します。

つまり、物質が存在しているという事は、
他の何かと作用しあっている(相互作用する)という事です。

この「作用しあう力」が、
『空間のある範囲の中に定在する(閉じ込められている)』状態にあるのが物質です。
(具体的には、これらの相互作用は電磁気力です)

この物質を構成する各々の原子には、
その重心に向かう引力があり、それらの引力を合成すると、
その物質の重心に向かう引力となります。

この、周囲に対して働く引力の強さが『質量』で、
質量はその物体の慣性力(慣性質量)と等しくなります。
(結果、重力加速度は質量によらず一定となります)

万有引力が物質の最小単位、素粒子などのレベルで、
全てのモノに対して等しく加速度を与える力だと考えれば、
質量によらず加速度が一定になるというのは納得できると思います。

一方、光や、熱や、重力など、
物質から放射され伝搬するエネルギーは、
物質内部から放射された瞬間に、
光であれば「光速度」まで加速されて、
後はそのまま広がり拡散していきます。

この「光速度」は光源との相対速度で、
他の何かに当たって、光として作用する(検出される)時には、
その何かとの相対速度によって、その光の速度や周波数が決まります。

相対速度が遅くなれば、周波数は低下して「赤方偏移」が大きくなり、
一定時間に届く光の量が減少するので「明るさ」も暗くなります。

速度が遅いほど、周波数は低下し、エネルギーも少なくなり、
検出限界を下回れば、光として検知することができなくなり、
静止状態ではエネルギーがゼロとなって、存在しないのと同じになります。

アインシュタインは「停止した光なんて想像できるか?」と言ったそうですが、
相対速度がゼロの光は、相互作用のエネルギーゼロなので観測不能で「存在しません」。

つまり、エネルギー(相互作用)が、
ある範囲内で静止している「物質」とは異なり、
エネルギーの伝搬そのものである光は、
静止状態では「存在しない」のと同じなので、
質量は無いことになるのでしょう。

しかし、光も慣性の影響を受ける以上、重力の影響を受けるので、
万有引力は(質量がある)物質だけでなく、
物質も定在するエネルギーの一種の形態だと考えれば、
光なども含めた全てのエネルギーに対して作用すると考えられます。

さて、「重力」と「時間」の関係ですが、
そもそも、一般相対性理論で証明されていると言われるのは、
主に原子時計の時刻を指します。

現在、東京スカイツリーの地上450m地点に設置された光格子時計(原子時計)と、
地上との時間差を計測していますが、
良く引き合いにされるのはGPS衛星に搭載されている原子時計です。

これは、概念としての「時」そのものではなく、
あくまでも、「原子の振動数」です。

地上にある原子時計と、GPS衛星に搭載されている原子時計では、
時刻が進む速度が異なります。

ちなみに、GPS衛星の場合は、衛星の「高度」(重力の強度)というよりも、
地球周回軌道にある「自由落下」なので、衛星内では「無重量状態」です。

つまり、地上の1Gの加速度の中で静止している原子時計と、
宇宙空間で自由落下している無重量状態の原子時計の、
原子の振動数の差の話です。

物質は、原子同士の反発力と引力が釣り合った間隔で配置され、
これは、個体であろうと液体であろうと気体であろうと、
基本的には同じです。

地上で静止している原子時計は、
地球の重力を加速度として受け止めて(影響して)いるので、
自らの重量によって、原子同士の間隔が縮み、
原子間の反発力と重力が釣り合っています。

つまり、無重量状態の原子同士の間隔と、
重力下での原子同士の間隔と原子間の相互反発力は異なる訳です。

また、原子の振動=運動も重力の影響を受けて、
水平方向であれば軌跡が曲がるでしょうし、
垂直方向であれば上昇と下降で速度が異なるハズです。

この状態で、原子の振動数が異なるというのは、
普通に考えて当然在り得る現象でしょう。

ちなみに、原子時計を航空機に積んで行った実験の場合は、
高度による重力の差だけでなく、
離陸や着陸時の「加速度」による影響を受けるハズです。

一方、飛行中の航空機やGPS衛星が慣性系にある場合、
「速度」は相対的なもので、物理現象に何ら影響を与えませんから、
一般相対性理論の「速度による時間の縮み」はあり得ません。

物理現象に影響を与えるのは、あくまでも「加速度」です。
加速度によるGは、方向(加速・減速)に関係なく、
物質を圧縮するので、同じ方向(時計の時刻の変化)に働きます。

【続く】